片足の甲を掬われ、爪先に口付けられた時は流石に驚いた。
それでは彼がこちらに屈服し、支配されているようではないか。
さしもの自分も、彼を抱くのにそこまでしようとは考えなかった。
だが、指先を口に含まれ、付け根を丹念に舌で弄われると
彼がその行動に出た理由を、否応なしに思い知らされた。
足指を包むぬめった感触に、違和感を覚えたのは一瞬だけ。
すぐに何も、考えられなくなった。
ほんの少し触れられただけで、全身から力が抜けてしまう。
曖昧であった熱が、途端に下腹の辺りで生々しい欲に変わる。
身体の中でも、ほんの小さな一部分だ。
他人はおろか、自分でも意識して触れたことなどない。
そんな箇所が、快楽を呼び起こす引き金にされてしまっている。
つい先刻まで、抱きたいと思っていた彼の手で。
「ああ、その顔だよ」
彼の目に映っている表情は、ひどく間の抜けたものなのだろう。
「その顔を見たかった」
こちらの様子をつぶさに見ながら、彼は満足げに目を細めた。
言葉と行動が、全て綯い交ぜになって心を甘く蕩かす。
[0回]
PR