忍者ブログ
  • 2025.11
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2026.01
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2025/12/31 18:16 】 |
【小ネタ】戦国の厳しさ教えますスペシャル・拡大版【か.い.こ島津】
本家様の太閤5プレイレポ「太.閤.日.新.伝」のおじいちゃんが大好きなので
中盤以降の内容を元に、「魂.の.ル.フ.ラ.ン」聞きながら書いた祖父×父。


城の一角。
かつて自室であった場所で、今の主と向き合っている。
父から受け継ぎ、ここまで築き上げたはずの城。
今はもう、自分のものではない。
城も家も臣も皆、奪われてしまった。
自分にそれら全てを与えたはずの、父の手で。

疲れ果てた自分に対し、父はいたく満足げであった。
「そう嘆くな、貴久」
脇息に凭れる姿も、既にこの部屋に馴染んでいる。
「全て、あるべき姿に戻っただけなのだよ」
家中の誰をも、殺めたわけではないのだから。
そう言って、父はゆったりと微笑すら浮かべてみせる。
同意など、到底できるはずもなかったが。

落城の瞬間、本丸から見た父の姿を思い出す。
あの時も父は、今と同じく悠然と微笑んでいた。
自ら育て上げたはずの、嫡男と孫に兵を差し向けながら。
城門の崩れ去る轟音も、血と硝煙の匂いも一顧だにせず。
まるで、長らく求めていた玩具を手に入れた童のように
楽しげに、屈託なく、笑っていたのだ。

眼前に引き立てられた自分を見下ろす時も、それは同じだった。
背筋も凍るようなあの時の感覚は、おそらく生涯忘れ得ぬものだ。
縛められ身動きすらままならぬ有様で、自分は父を見上げた。
幼い頃から、父の感情を窺う時はずっとそうしてきたように。
前髪に隠された瞳の代わりに、襟元に巻かれた狐の瞳を見た。

慣れ親しんだはずのそれは、見たこともない色を湛えていた。
この乱世にありふれた、権力や財に対する欲とは根本から違う。
自らに連なる血族への、それは情愛だった。
どこまでも深く、深く、底の見えぬ淵のような。

それを目の当たりにした時、自分は知ってしまったのだ。
父が自分を育て補佐したのは、家のためなどではなかった。
ただ、機を伺っていたのだ。熟れた実が落ちるのを待つように。
自らが育て上げたものを再び掌中に収め、取り込むこの時を。

息子たちが死なずに済んだのは、不幸中の幸いであったろう。
とりわけ長子は、父のことを神の如く敬い慕っていた。
兄がそうであったから、他の弟らも彼に倣い、父に降った。
孫を可愛がっていた父が、それに応えぬはずもない。

ならば。
「そのお優しい父上は、私をどうするおつもりなのですか」
「何だ、拗ねているのか」
黙り込んだのは図星を指されたからではなく、疲れ果てたからだ。
孫らを誰一人損なうまいと拘泥し、苦心してそれを果たしたのに対し
実子であるはずの自分に対する父の扱いは、至ってぞんざいだった。
この眼前で、どうなっても構わないとまで断言してみせたほどだ。

しかし、同じ唇で父は言う。
「お前も来なさい、貴久」
手を伸ばし、硬い髭に覆われたこちらの顎に指をかけて。
「帰るのだ、私の元へ」
優しげな仕草で上を向かせ、有無を言わせず視線を合わせる。
まるで捕虜のような扱いだ――そう思うのは、愚かなのだろう。
捕虜のよう、ではない。今の自分は、まごうかたなき捕虜だ。
ただ、相手が実の父というだけで。

「もし、嫌だと言ったら?」
息子らがそうしたように、従順に頷けたなら楽だったろうか。
だが、城を奪われ、家名を失おうとも、自分は当主だ。
受け継いだ家を守り、築き上げてきた矜持がある。
「ここで腹を切れとでも、おっしゃるのですか」
挑むような物言いは、囚われの身としてはいささか軽率だろう。
だが、たとえそれに頷かれたとしても、悔いる気はしなかった。
自分は父の子だ。だが父の傀儡でもなければ、その一部でもない。
幼子を徒に甘やかし、かと思えば戯れに突き放すような
気紛れな情愛になど、振り回されてはいられない。
「それが、お前の答えか」
わざとらしく大仰な頷きに、鋭い視線を返す。

「そうか」
確かめるようなその声は、間近から聞こえた。
驚きに見開いた目の前を、陽光を透かしたような色の髪が覆い隠す。

ぬめるような感触に口中を支配され、抗えぬ己に愕然とした。
一度絡め取られた舌を離されると、自分のものであるはずの身体は
まるで糸の切れた人形のように、一切の力を失ってしまう。
自らの手が畳の上に落ちる光景すら、まるで他人事のように見えた。

その様子に、父は口元の笑みをまた深くする。
「忘れたのか、貴久」
思い知らせるように、軍服の釦を一つ一つ外しながら。
「お前の半分は、私なのだよ」
最初から、こうなることを知っていたかのように。

覆い被さる父の影。
天蓋のように垂れ落ちた髪が、畳の上で螺旋を描いた。
「もう一度言うぞ」
露になった胸元を、父の衿元に巻かれた狐の毛が撫ぜる。
「生きて、私の下に降れ」
ぞくりとした。
肌を擽られる感覚にではなく、もっと得体の知れぬ何か。
心の内で拠り所としていたものが、崩れ落ちてゆく錯覚に。

縋るように見上げた視界に、最後に映ったのは父の瞳。
生まれて初めて目にしたそれは、吸い込まれるような深さだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
か.い.こ取り扱いサイトさんから、リンク貼っていただけたので張り切ってみた
(訳:今後ともよろしくお願いします)

拍手[2回]

PR
【2010/11/26 23:12 】 | か.い.こ | 有り難いご意見(4)
<<【現パラ】その転機【むねなり→なりむね】 | ホーム | 【現パラ】その閑話【むねなり?】>>
有り難いご意見
初めまして
初めまして。トウコと申します。
以前から度々お邪魔させて頂いておりました。
日新の黒いというか、妖しいというか、何ともいえずミステリアスな雰囲気が素敵です!それに抗えない貴久にも、とても萌えました。
また、違う記事になりますが、『霹靂』も大好きです。道雪の足に関する下りが紹運の思いの強さを物語っているようで、とても切ない気持になりました。

まとまりのない長文で申し訳ありません。
これからも応援しております。
それでは、失礼致しました。
【2011/01/04 12:20】| | トウコ #29efd7b29d [ 編集 ]


無題
僻地へようこそ!……もとい、コメントありがとうございます。
ミステリアス日新様といい、足に口付ける紹運パパといい
推したかった萌ポイントに言及していただけて、とても嬉しいです。
こう、爽やかな話とは縁遠い、大変アレなブログなのですが
もしよければ、またお暇な時にでも覗いてやってくださいませ。

ご来訪、ありがとうございました!
【2011/01/04 19:55】| | C-7 #553b6f56b4 [ 編集 ]


無題
初めまして、コウと申します。
ネットの海を漂いやってきましたが、このお話で日新×貴久にハマッてしまいました!
お爺ちゃんの色気が半端なくて大好きです!!
【2011/01/05 12:04】| | コウ #99bde1b174 [ 編集 ]


無題
ようこそお越しくださいました。
ぶっちゃけ自分以外に見たことなかった日新様の二次創作ですが
最近コメントいただけるようになって、同志様が増えたと喜んでおります。
日×貴いいですよね!ハマっていただけたなら光栄です。

ご来訪&コメントありがとうございました!
【2011/01/05 17:28】| | C-7 #553b6f56b4 [ 編集 ]


貴重なご意見の投稿














<<前ページ | ホーム | 次ページ>>