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【2025/12/31 18:16 】 |
【小ネタ】今こそあなたに口付けを【むねなり】
二次に限らず、創作やってる人間には誰しも十八番というか
どんな作品でも一度はやってしまうネタがあると思うんだ。
そんなわけで、むねなりで媚薬ネタ。冒頭だけなので短い。


取り出した薬包を開くと、彼は目敏くそれに気づいた。
「何だい、それは?」
問いかける声は、わずかに緊張の色を示している。
彼のことだ。尋ねるまでもなく、薄々感づいてはいるのだろう。

その推測が正しいことを伝えると、案の定、彼は表情を強張らせた。
「……私は、嫌だよ?」
「大丈夫ですよ」
できるだけ優しく囁いたつもりだったが、逆効果だったらしい。
じりじりと後じさる彼の姿は、拒絶の意を隠そうともしなかった。
追い縋ると、実にわかりやすく眉根を寄せられる。
もし手を伸ばしていれば、振り払われたかもしれない。
そんな想像を容易にさせるほど、彼の態度は硬かった。

「君は、こういう搦め手は好きじゃないと思っていたよ」
「ええ、その通りです」
騙し討つような真似は、本意ではない。特に、彼に対しては。
たとえそうでなくとも、策や謀は本来彼の十八番だ。
試みたところで、最後まで隠しおおせるとは思えなかった。
「だから、こうして手の内をお見せしたでしょう」
掌を開き、包みの中の粉まで示してみせる。
彼は頭を掻き、それから困り果てたように重い溜息をつく。
そして、一言。

「嫌だよ」
折れてくれたかと思いきや、その声には全く迷いがない。
日頃の曖昧で冗長な言動が、嘘のような頑なさだ。
「嫌だからね」
彼がこれほど強硬に何かを訴える姿は、見たことがなかった。
このままでは、埒が明かない。

「わかりました」
頷いてみせると、彼は安堵したように微笑んだ。
「では、これは俺が」
見開かれた目の前で上を向き、薬包の中身を一息で口に含む。
咀嚼するように口を動かし、粉を唾液によく溶かす。
そうしておいて、呆気にとられたままでいた彼の唇を、奪った。

不意を突かれ、息を詰まらせた唇を舌で割り開く。
そのまま、口に含んでいた薬を流し込んだ。
吐き出し、押し戻すことは許さない。
唾液ごと薬を飲み下すまで、唇を塞ぎ、抱き締めて抵抗を封じる。

やがてその抵抗も止み、細い喉が諦めたように動いた。
抱擁を解き、見つめた彼の瞳は潤んでいる。
「……わからないよ」
どうして、こんなことを。
悲しげに眉を下げる彼の瞳を、真っ直ぐに覗き込む。
「好きだからです」
男なら誰しも、思い当たる節があるはずだ。
好いた相手を思うさま感じさせ、我を失わせてみたいと思うのは。

褥を共にした経験なら、既にある。
拒まれてはいないし、それなりの反応を引き出せた自信もある。
だが、それはあくまで、彼が認める範囲でのことだ。
本当の意味で我を失い、全てを委ねる彼の姿を自分はまだ知らない。
同時に、並の手段ではそこに至れないことも、容易に感じ取れた。
だから。

「大丈夫」
だから、見たいのだ。
「俺も、一緒ですから」
自らが、同じ毒を口にしてでも。

―――――――――――――――――――――――――――――――
イケメンに薬とか卑怯な手は似合わん!という向きもあるとは思うのですが
「まだできてない相手を口説き落とすための手段」としてではなく
「既にいい仲の相手に、一歩踏み込むor雰囲気を変える手段」
としてなら、ありじゃないかと思ったのです。一種のプレイというか。
異論は無論認める。

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【2010/10/25 08:31 】 | 戦ムソ | 有り難いご意見(0)
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