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【2025/12/31 20:06 】 |
【小ネタ】ヴェルタース日新様【か.い.こ島津】
前に言ってた、島津のおじいちゃんと長男が仲良く水飴を食べる話。
プレイというほど大したことはしてない。そして短い。


「兄ちゃん兄ちゃん、お煎餅もらったけん一緒に食べよう」
「ほう、随分と殊勝な……どういう風の吹き回しじゃ。
さてはお前のピロリ菌を俺に伝染らせて暗殺しようという腹か」
「なんでそんな邪推するの!?」

騒ぐ弟を残し、独り廊下を歩む。
目指す部屋が近づくにつれ、辺りは静けさに包まれていった。
血族や家臣の作る喧騒を離れた、荘厳なまでの静寂。

「日新様。義久、参りました」
「おお、よう来た」
居室の前で名乗ると、上機嫌な声が返ってくる。
障子を開けると、既に祖父は傍らに壷を置いて待っていた。
「さ、いらっしゃい」
「……失礼します」
丁寧に障子を閉め、座る祖父の傍へ。
といっても、眼前に腰を下ろすだけでは足りない。
「ほらほら、もっとこっち」
手招きされるままに近づき、促されるままに膝の上へ。
今や背丈も変わらぬほどに長じた自分を、祖父は未だ童のように扱う。
その瞳は昔から長い前髪に隠され、見えないのが常であったが
祖父の目に映る自分の姿は、未だ幼子のそれなのかもしれなかった。

「大きくなったわねえ」
嬉しげな、そして感慨深げな声。
同じ遣り取りを何度繰り返しても、変わらない。
「重くは、ありませんか」
「ほほほ、何の何の」
問いかければ、祖父は決まってころころと笑う。
「可愛い孫の身体、何の重いことがあろう」
そう言って頭を撫でられれば、もう自分には反論の術がない。
「はい、あーん」
傍らの壷から、手際よく中身を掬って差し出される匙も。
雛鳥の如く従順に口を開け、受け入れるより他なくなる。

昔の話だ。
幼かった自分に、祖父が煎餅をくれた。
だが、ちょうど歯の生え変わる時期であった自分は
固い物を噛むのがむず痒いからと言って、受け取らなかった。
すると祖父は、自らの口にそれを入れて噛みほぐしたのだ。
柔らかくなった煎餅が、改めて差し出されるのを見て
童であった自分は、全く言葉を失ってしまった。

それからというもの、祖父はこうして水飴を用意してくれる。
元服も初陣も終え、一人前の男子となった自分に、今も。

「おいしい?」
「……はい」
「じゃあ、もう一口」
再び差し出される匙。それはそれは、楽しげに嬉しげに。
とろりと流れ込む甘さは、水菓子などとは比べ物にならない。
ほんの少し口に含んだだけで、顎が痺れるような濃さだ。
だが、噎せ返るようなその味から、自分は逃れ得たためしがない。
温かな膝の上、蕩けるように甘い微笑みを目の前にしては。

これほど近くにいても、前髪に隠された瞳は見えない。
だが、わかる。祖父の微笑は、心からの慈しみゆえのものだ。
その証拠に。
衿元を包む狐の目も、柔らかな笑みの形に細められている。

だからこそ、その姿から視線を外すことができない。
祖父の手が、飽くほど甘い壷の中身を三度目に掬う間も。
そして、
「ついてるわよ、義久」
いつの間にか顎に滴っていた滴を、不意に舌で掬われる時も。

まるで時が止まったかのように、動けなくなる自分を前に。
「甘かねえ」
舌先に拭った飴を舐め取り、祖父は微笑む。
間近で重なり揺れる前髪は、日を透かし同じ色に輝いている。
今は見えぬ瞳も、覗き込めばきっと同じ色をしているだろう。
胸が早鐘を打つのは、生半可な恋情のそれなどではない。
響き合うのだ。この身に流れる血が。
敬慕してやまない、このひとと同じ血が。

もっと、近しくありたい、と。

「日新様」
祖父の手から匙を取り、今度はこちらから差し出す。
その喉が飴を飲み下すよりも先に、唇を重ねた。
わずかな隙間から、蕩けそうな甘さが流れ込む。
「まだ、零しとらんよ」
笑って言いながらも、祖父は拒もうとしなかった。
それどころか、飴を載せた舌先を自ら差し出してくれる。
嬉しくて、気づけば夢中でその味を求めていた。
それこそ遠い昔、幼い頃に返ったような心持ちで。

近づいては離れる唇の間を、とろりと透明な糸が繋ぐ。
秘めやかな戯れを、部屋を包む静寂はいつまでも護っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――
日新様の口調は大きく分けて「~だぞ」とか「~なのだよ」という常体と
「~なのよ」「~ねえ」というオネエ風に大別されると思うのですが
個人的に後者が大好きなので、そっちを前面に押し出しました。
それにしてもこのブログ、取り扱いカプの年齢差がパネェ。

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【2010/10/25 16:46 】 | か.い.こ | 有り難いご意見(0)
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