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【2025/12/31 18:16 】 |
【BSR3】雨月夜話、水月ノ交・弐【尼子×姉小路】
砂っぽい人が森の人を襲ってる話。これの続き。
まだ本番ではないので、触る程度の腐向けです。


離した片手で障子を閉める間さえ、彼はついに動かなかった。
背に残る痛みに顔を歪めていたのも、ほんの一瞬のことだ。
あとはただ静かな瞳で、じっとこちらを見上げている。
何も、言わずに。

ああ、やっとこちらを見た――ぼんやりと、そう思った。
しかし改めて正面から向き合うと、今度は妙に落ち着かない。
言葉もなく見つめるその目が、ひどく心をざわつかせる。
これから自分がどのような目に遭うか、理解しているのだろうか。
ふと胸を過ったそんな思いは、昂奮というよりむしろ心細さに近い。

だが、退くわけにはいかなかった。
今を逃せば、次はない。そんな、切迫した確信がある。
雨が上がれば、彼はまたあの高楼の上で日がな一日過ごすのだろう。
それでは駄目だ。あんなにも青い空の下で、果たせる用ではない。
まして彼が丸太の中で眠っている時などでは、話にもならない。

「何を」
そう開かれた唇の上に親指を載せると、彼は大人しく口を噤んだ。
口元に滑る指先を、頬を包む掌を、静かな視線がつぶさに追う。
だが、それだけだ。
身動き一つ取れない状況だというのに、その姿はあまりに穏やかで
拒絶も了解も、心の動きと呼べそうなものは一切感じさせない。

その様子がなおさらに、不安とも焦燥ともつかぬ感情を煽り立てた。
もとより、巧言令色は好きではない。実行が伴わぬなら、なおのこと。
だが、寡黙がこんなにも測り難く、厄介なものだとは思わなかった。
それこそ、深い森のようだ。声を限りに叫んでも、木霊すら返らない。
自分がここにいて、その眼前に彼がいるという当然の事実さえ
ひどく儚く、曖昧なもののように思えて、わからなくなる。

生まれ育った地の印象というものは、人の心にいつまでも影を落とす。
その点では、おそらく自分も彼と似たようなものなのだろう。
こうしてすぐ傍に、これ以上ないほど近くにいるのに。
手を伸ばせば木石ではなく、人の体温が確かに感じ取れるのに。
その全てが明日には消える夢、砂上の楼閣であるかのように思えてしまうのだ。

形のないその不安を振り切ろうと、強引に唇を重ねる。
抵抗を予想して差し入れた舌は、しかし容易く彼の歯列を割った。
奥の方で触れた舌先が、ぴくん、と小さく震える。
しかし、それだけだった。
拒む気配も、応える様子もない。
上辺を嘗め、根元を吸い、あるいは深く絡める――
その動作全てに対し、されるがままになっている。

衣の袷から手を差し入れても、反応は似たようなものだった。
肌が直に触れ合うたび、その下で筋が強張るのは感じ取れる。
だが、何度繰り返しても、それ以上のものは決して返らない。
時折、落ち着かない様子で息を詰める様子だけは伝わるものの
おそらくそれは、触れられること自体に慣れていないがゆえの緊張だ。
間違っても、房事の場に相応しい姿ではない。

「おい」
唇を離して呼びかけると、彼は息を整えながらこちらを見た。
「何で、黙ってんだよ」
問いかければほんのわずかだけ、訝しむように眉根が寄せられる。
「ガキじゃねえんだ。……何されるかくらい、わかるよな?」
いくら浮世離れしているといっても、仮にも彼は国主だ。
つまり、好むと好まざるとに関わらず、継嗣を得たことのある立場であり
この状況で知らぬ存ぜぬを通し、清廉を装える身ではないはずなのだ。

にもかかわらず、彼は戸惑ったような顔をするばかりだった。
「……何故、私を」
確かに女を侍らせ、あるいは稚児遊びに興じるような男には見えない。
彼の安らぎはおそらく、そういったこととは別のところにあるのだろう。

それでは、困る。
「お前だからだ」
いや、そうでなくては、困る。
「諦めるのも、他の奴で代わりにするのも、御免だ」

答えになっていないことなど、わかっている。
一方、それが偽りようのない本心であることも、また事実だ。
労り、気遣い、包み込むような、甘やかな情では決してない。
ただ、確かなものが欲しいだけだ。
獲物を狙う獣にも似た鋭いそれは、強いて言えば執着か。

だが、その執着の正体が、自分でも掴めない。
縋るように触れ続けてしまう手を、止められないのは何故だろう。
不慣れな身体から反応を引き出そうと、躍起になってしまうのは。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
全4話の予定、うち4話目は既に書けてるのですが
3部目ができてないので、自分に発破をかけるため
できてる部分だけでも先にアップしてみる。



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【2011/05/03 21:54 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0)
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