「この戦いが終わったら、皆で遊びに行こうな!」
そう言い残し、神流川の領主は姿を消した。
「不器用なりに、手がかりを見つけました。義兄上の行方は……」
そう言い残し、窪田の領主は姿を消した。
「俺は無敵の主人公!ここは俺に任せて、お前は国に戻れ!」
そう言い残し、上杉に仕える将は姿を消した。
「亡者のみが知る真実、答えてたまわ……ふむ、かような夜分に客人か」
そう言い残し、恐山の領主は姿を消した。
残された領主は二人。
「今まで馴れ合ってたのは、全部このためか」
月山富田城の領主は、月下に白刃を翳す。
「所詮、お前も同じか!言うことだけは立派な、あの頭でっかちと!」
「私は、誰も殺していない」
帰雲城の領主は、深緑の中で両腕を広げる。
「皆――この森で、眠っているだけだ」
居城も目的も異なる領主たちが、何の前触れもなく行方を眩ませ、命を落とす。
誰が、何のために。真相に気づかぬまま、生き残った者らは剣を手に狂い舞う。
さながら、魔に魅入られたかの如く。
信じ、求め、疑い、傷つけ、最後に残るものは何か。
全てを知るのは、梢に懸かる蒼白い月だけ。
地方領主サスペンス劇場「蒼葬の森の逢魔時」
「私の願いは、一つだけだ」
「お前を――連れて逝きたい」
そして、誰もいなくなる。
[1回]
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